春休み内、主人公の祖母の七回忌、それは親戚が一堂に会する日。故人を偲ぶ式も終わり、一族は見知った仲同士、宴会に大いに謳った。主人公の父母は酔いとお喋りに、久しい顔合わせに浸っていた。
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主人公・葉子が一族中でも親しい者と集まり雑談に花を咲かせる中、一族の一人、真田泰明が突然に口を開く。「七回忌の晩、怖い話をし合うと死者が蘇るんだそうだ」
同じく一族の一人藤村正美の制止もままならずに一同は空き間を見つけ移動。一方、いつも来る事で評判の和弘が15時までに来るといっていたのにも関わらず、21時になってもまだ来ない。共にいる親戚中が不安に思う中、使われていないはずの空き間が賑わっているのを不審に思って覗いた本家の嫁前田和子が怖い話の参加者に加わる。直後、その和子が口を開いた。
「この客間のこと知ってるの? ちょっとした曰くつきなのよ。それはね……」
解説
語り部六人を好きな順番で指定していき、全員聞き終えた後の六人目に応じた七人目(七話目)の話を無事聞き終える事が目的という、同社制作の前作『学校であった怖い話』(以下前作)に、ゲームとしての作りを同じとしている。システムの詳細は前作を参照。主な変更点は次に挙げる通り:
語り部のグラフィックパターンが複数用意された。
選択肢が増えた。
話の舞台が建物一箇所以外に及ぶことで、シナリオがバラエティに富んだ内容を取り扱う事が可能になった。
バッドエンドのパターンが増えた。
前作では [スタートボタン] を押す事により、話している最中の語り部の話を最初から聞き直したり、以前までの話を語り終えた語り部を一人単位で聞き直し、その聞き返した語り部以後の順番を再度任意選択できる機能が盛り込まれていたが本作では使用不可能になっている。
キャストは一部を除き、前作に同じく語り部に扮した開発スタッフ。また、前作で語り部を担当した人物も端役に扮して出演している。キャラクターとしては前作から風間が特別出演し、担当者も同一人物。
登場人物
各キャラクターに共通して、シナリオ・EDによっては非常に裏表のある性格として描かれており、一番怖いのは「人間の心」であるという前作のテーマを受け継いでいる。
主人公
前田葉子(まえだ ようこ)
年齢:15歳
職業:中学生
中学を卒業し、今年で私立女子高の高校一年生になる女の子。一応、立場上は語り部の一人であるが、作品中では聞き手に回るため本人が怪談を語る機会は無い。真田泰明に好感を抱く一方で、その様子をからかう前田良夫を嫌う。名前は姓名共に変更可能で、上の姓名が予め設定されており、オープニングデモではこの姓名で進行する。性別は固定。
ごく普通の少女であるが、話の展開によっては非常にコミカルな思考や言動も見せる。選択肢も性格を表した内容のものが多く、他の語り部に比べれば極端な豹変シーンは少ない。展開によっては良夫や哲夫と結ばれるEDもあるが、憧れの泰明への想いが成就する展開は不思議と存在しない。
語り部
前田和子(まえだ かずこ)
年齢:53歳
職業:主婦
本家の嫁で葉子の義理の叔母。息子に良夫がいるが、とても五十代には見えないほど若々しい。地元の主婦らしく、地域の伝統に根ざした怖い話を語る。
温厚で朗らかな性格で、主人公に対しても親しみのある態度で接するが、展開によっては家や良夫を想うあまり無慈悲な行動に出る場面も。
あるシナリオでは由香里と言い争う場面があり、家に縛られている為か、良くも悪くも我を通そうとするタイプの由香里とは少々そりが合わないようなそぶりも見られる。
前田良夫(まえだ よしお)
年齢:11歳
職業:小学六年生
和子の一人息子で葉子の従兄弟。真田泰明に好意を抱く主人公をからかうが、それが幼いなりの愛情表現であることは多くのシーンで窺える。子供の噂話や子供の目線から見た怖い話が得意。
隠しシナリオのパターンによっては妙に大人びた一面を見せることも。展開によっては主人公と結ばれる結末も用意されており、主人公との結婚後の様子をわずかに垣間見ることもできる。
真田泰明(さなだ やすあき)
年齢:33歳
職業:TVプロデューサー
主人公の従兄弟で、この怪談の企画者。主人公にとって憧れの人で、歳のわりに若々しく、職業がプロデューサーという点もあるため、女性からの人気は高い。職業柄、業界の裏話に詳しいが、性質上、謎が謎のまま終わってしまう話も少なくない。その裏話の幾らかには、これも業界で生きていくためと自身も関与。
展開によって性格が豹変する場面が非常に多く、最も裏表の激しい人物。主人公を殺害する展開もある。主人公と結ばれる結末は存在しておらず、それらしい選択肢を選んでも背筋の凍る結末に至る場合が多い。とは言え、上記の性格付けはバッドEDに応じた変容であり、身を呈して主人公をかばうような展開も存在する。
山崎哲夫(やまざき てつお)
年齢:28歳
職業:自称冒険家
主人公の遠縁の親戚。自身は世界を回る冒険家を自負しているが、主人公が言うには鈴木由香里に同じくフリーターだそうである。ガハハと声を上げて笑う豪快な性格で、興味ある話題を話し出すと止まらない。意外と話自体はスタンダードなものが目立つ。
山をこよなく愛し、話に熱が入りすぎて興奮状態に陥る場合も。シナリオによっては、幼い頃は気弱な性格であったことが明かされるなど、意外な側面を持ち合わせていることも多い。一途で純情な性格はほぼ全てのシナリオで共通しており、豹変することはあっても、残忍な顔を見せることはほとんど無い。良夫同様、主人公といい仲になるEDも存在する。
鈴木由香里(すずき ゆかり)
年齢:20歳
職業:フリーター
主人公の遠縁の親戚。高校卒業後、花嫁修業と称して職を転々としているフリーター。醒めた目で世を斜めに見据え、時に残酷な語りをする。変わった、言い換えるなら危険なアルバイト経験が多いらしく、話題は豊富。主人公を妹のように可愛がっている。
霊感があるらしく、実体験と称して不思議な出来事を語る話もある。展開によっては自分の考えを通すため危険な行動に出る場合も。
藤村正美(ふじむら まさみ)
年齢:26歳
職業:看護師
主人公の遠縁の親戚。埼玉県の大手病院で看護師(作中における表記は看護婦)をつとめる。美しい人で患者に献身的に尽くす様が言動からも伺えるが、その方向性がどこか微妙に歪んでいる危険人物でもある。職業柄、生と死に関連する話が多い。
オカルトにも造詣が深い面を多く見せ、シナリオによっては催眠術や霊能力めいた力を使う展開もある。ちなみに、彼女の顔グラフィック中、怒り顔はかなり珍しいものである。
その他
和弘(かずひろ)
七回忌の日に15時までに前田家に来る予定だったが、何故か21時になっても現れない参加者。シナリオの展開次第では登場する。
風間望(かざま のぞむ)
前作からの特別出演。本作においても重い雰囲気の空き間に一時の華を添える。
シナリオの展開で、全ての話に登場させる事も可能。条件を満たせば第七話の隠しシナリオも発生する。
シナリオ紹介(抜粋/概略)
ここに書かれたシナリオは一部であり、特に有名かつ人気が高いものも含む。シナリオの総数は隠しシナリオを合わせ、総数四十八本。選択肢によっては、一つの話から複数のシナリオに派生する。選択肢によっては主たるシナリオから外れた短い話をしてくれる場合もある。怖い話と言うより不思議な話が多いのも特徴である。
赤い靴の女の子→晦
葉子の祖母が三つの頃に神社で願かけをしている赤い靴を履いた女の子と知り合った。その子のお願いは、母親の病気を治して欲しいというものだったが、祖母はうっかりその願かけを邪魔してしまい、その直後にその子の母親は亡くなってしまう。そのため、祖母はその責任が自分にあると思い込んでしまい、祖母は自分の血をひく女の子に赤い靴の女の子の呪いがかからないように特別なお参りをするようになった。
続く第七話とセットの話になっており、作品タイトルの「晦(つきこもり)」の意味も語られる。短い結末が多い第七話の中ではほぼ最長のシナリオ。登場人物の隠された思惑が絡み合い、取り返しのつかない悲劇へとつながる。真の「晦(つきこもり)」というにふさわしいシナリオであり、難易度も相応に高くなっている。
わらし様
前田家同様に藁葺き屋根の古いお屋敷で暮らす、良夫のクラスメイト・立川。立川の屋敷に「わらし様」が出ると聞き、夏休みの自由研究として調べることに。良夫をはじめ数人のクラスメイトが立川の自宅に集まるが……。
「わらし様」の正体は選択肢によって変化し、展開しだいでは思わぬ被害が出ることも。
ヒナキちゃん
前田家の近くにある誰のものともわからない私有地に青いリボンに青いスカートに青いセーラーの襟の青いセーラー服を着たヒナキちゃんと呼ばれる謎の女子学生が出没する。ヒナキちゃんと出会った人は恐ろしい目に逢うという……。
沢登り
最高の悲鳴
自殺の名所
ある犬の夢
転校生の秘密
死を招くベッド
使うと患者が死んでしまうとされる死のベッド。死のベッドは長年使わないことになっていたが、ある交通事故によって急増した緊急患者を受け入れるため、どうしても死のベッドを使わざるを得なくなる。そして、その死のベッドを使った患者が直面した恐怖とは……。
最高難度を誇るシナリオ。ほぼすべての結末がバッドエンド。反面、語り部の不気味さも相まって恐怖度は高い。
七不思議
良夫を六人目に選ぶと発生するシナリオで、良夫の知る七不思議をひとつずつ順不同に選んでいく。
選択肢の無い話もあるが、思わぬ形でバットエンドを迎える話もあり、晦の特徴である豊富な展開の奥深さが感じ取れるシナリオである。
子守のバイト(隠された真実・明かされた過去)
由香里がある屋敷に子守のアルバイトとして雇われた。そこで非常に気味の悪い出来事が起こったというが……。
特定の選択肢を選び、次の話に和子と良夫のどちらかを選ぶと、それぞれ別の隠しシナリオが発生する。話数にして三話分がこのシナリオに当てられており、ある意味裏「晦(つきこもり)」とも言える特殊なシナリオとなっている。
風間さん(ある絵画・田舎の森・行商人・迷惑な患者・降霊術・披露宴・過去の事件・風間登場)
語り部全員に各一話ずつ風間が登場するシナリオが存在している。なお、第七話は通常・隠しの二パターン存在する為、四十八話中八話、風間シナリオが存在することになる。
選択肢によっては多少ホラー風味の展開にもなるが、一部を除いて大半が荒唐無稽な喜劇となっている。
評価
前作ならびに本作の監督をつとめた飯島健男は、前作を「笑いのない、あってはならない正統派の怪談物作品として制作した」と付属のマニュアル上で発言した。
メニューで、本編未使用の曲を試聴できるほど、豊富に用意されたBGMや効果音のリアルさから怖さが上昇した。前作はピアノ曲であったが、今作においてはオルゴール曲を採用している。
選択肢を選んで部屋を探索するイベントが増加し、アドベンチャー要素が上昇した。
語り部は良夫を除いて大人である(前作と同世代の語り部は1人も存在しない)。
語り部の職業も番組制作会社のプロデューサーや冒険家や看護師など広範であり、内容も職場である病院やテレビ局に関するものが過半を占める。
よって、シナリオ上の舞台が会場である客間以外になったことに伴う、晦-つきこもり全体としての密度が低くなった。会場である客間が舞台のシナリオも用意されている一方で、その比率や全体を纏め上げるに耐え得るシナリオとしての完成度は低く、方々に散らばったシナリオを纏めるには及ばない。例として七話目に発生するシナリオの大半が一本道であったり、七話一続きのシナリオのテーマ性が低いことが挙げられる。
豊富なバッドエンドパターンに伴い、七話全てを無事聞き終えること自体が難しくなり、ゲーム全体の難易度が上昇した。例として、数十種の結末中で二種を除いて全てゲームオーバー、数十分かかる長編の結末がほぼ最初の分岐によってのみ決定される等のシナリオが存在することが挙げられる。
以上の理由から前作には及ばないとする評価が多いものの、前作同様テキスト量や選択肢分岐は多く、親戚同士ゆえの親しみのある雰囲気や独特の人間模様など、晦-つきこもり独自の魅力を支持するファンも少なくはない。